山口貝類研究談話会会誌 ユリヤガイ, 10(1/2). October 2008

原著論文

佐賀県七浦干潟公園で採集された稀少な二枚貝類2種

古賀庸憲・山下博由・佐竹 潔・矢部 徹

要約 有明海に面する佐賀県鹿島市七浦干潟公園において,二枚貝類のEstellacar olivacea (Reeve, 1844) ササゲミミエガイ2個体,Glauconome chinensis Gray, 1828 ハナグモリ22個体の棲息を確認した。これら2種は国内の複数のレッドデータブックに登載されている絶滅危惧種である。また,この2種について文献・標本記録を調査し,有明海での産出状況をまとめた。有明海においては,ササゲミミエガイは棲息地が少なく,ハナグモリは比較的多くの棲息地が確認された。しかし,棲息地(干潟)の消失が今なお進んでいることから,現在の2種の棲息状況は,調査時より悪化している可能性が高い。

キーワード: ササゲミミエガイ,ハナグモリ,軟泥底,絶滅危惧種,生物多様性,保全,有明海


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泡瀬干潟の貝類相

名和 純

要約 沖縄島中城湾泡瀬干潟(沖縄県沖縄市泡瀬)は,琉球列島に現存する最大規模の干潟である。泡瀬干潟において1999年6月から2005年4月にかけて貝類相の調査を行い,322種の貝類を確認した。この確認種数は,琉球列島の干潟域における貝類の記録種数としては最多である。泡瀬干潟の貝類相は,生息環境の異なる7つの群集に区分される。このうち特に,海草藻場の貝類群集は,高い種多様性と豊富な生息量によって,その貝類相を特徴付けるものである。生物地理的には熱帯起源のインド・西太平洋要素が大半を占めるが,中国大陸沿岸の温帯域に分布の中心を持つ東亜固有要素も少数含まれている。322種の貝類のうち101種が沖縄県のレッドデータブックに,51種が世界自然保護基金ジャパンのレッドデータブックに登載されており,非常に多くの絶滅危惧種が分布していることが確認された。また,Leucotina sp. ニライカナイゴウナなどの未記載種の可能性がある種,Monitilora simplex オボロヅキ,Solen soleneae ジャングサマテガイなどの日本新記録種,Mactra pulchella トウカイタママキなどの琉球列島において分布域の非常に狭い種が確認された。泡瀬干潟は,種多様性の高さや絶滅危惧種の多さなどが琉球列島の干潟域の中では最大であり,保全価値が極めて高い。

キーワード: 保全,絶滅危惧種,中城湾,琉球列島,海草藻場,種多様性


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