山口貝類研究談話会会誌 ユリヤガイ, 9(2). December 2003

原著論文

稀少種ウスハマグリ (二枚貝綱:マルスダレガイ科) の長崎県佐世保市における個体群の発見

川内野 善治

要約 長崎県佐世保市浅子町長浦の砂質干潟において, Pitar (Pitarina) japonicus Kuroda & Kawamoto ウスハマグリの生貝及び新鮮な死殻が見出された。日本の潮間帯における本種の確実な棲息記録は本報告が初めてである。本種は,近年の日本では生貝の産出記録がほとんどないため,今回の個体群の生物多様性保全学上の意義を論ずる。

キーワード: ウスハマグリ,絶滅危惧種,生物多様性保全,棲息状況,砂質干潟,九州


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佐賀県田古里川河口干潟で採集された稀少な二枚貝類3種と甲殻類1種

古賀 庸憲・佐竹 潔・矢部 徹・野原 精一・上野 隆平・宇田川 弘勝・広木 幹也・河地 正伸・渡辺 信

要約 有明海に面する佐賀県田古里川河口の軟泥干潟において,二枚貝類のTellina (Serratina) capsoides イチョウシラトリ1個体,Tellina (Moerella) iridescens テリザクラ4個体,Tegillarca granosa ハイガイ3個体,甲殻類のCamptandrium sexdentatum ムツハアリアケガニ7個体を採集した。イチョウシラトリ以外の3種は複数個体が採集されたため,ここに個体群が存在すると考えられる。これら4種はいずれも近年の確実な棲息記録が少なく,絶滅に瀕している。イチョウシラトリとハイガイは強内湾性の種であり,この干潟における生貝の採集はどちらも今回が初めてである。テリザクラとムツハアリアケガニは砂泥性の種とされたこともあるが,最近の採集例によると主として内湾の軟泥地に産するようである。これらの種については今後の追跡調査が必要である。

キーワード: ハイガイ,イチョウシラトリ,テリザクラ,ムツハアリアケガニ,軟泥底,絶滅危惧種,生物多様性,保全,有明海,九州


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四国西南部で発見されたドロアワモチ (腹足綱:有肺目:ドロアワモチ科)

須賀 秀夫・石川 裕・水野 晃秀

要約 日本本土より絶滅した可能性が指摘されていた Onchidium hongkongense Britton, 1984 ドロアワモチが,四国西南部の御荘湾に多数棲息していることを確認した。湾の中央部から湾奥部にかけての3カ所で棲息を確認した。その中には8.5個体/m2という高密度で棲息している場所も見られた。本種は満潮時は石垣の間や石の下等に隠れており,干潮時に這い出してきて泥に含まれる有機物を餌としていると思われる。しかし,それらの棲息地は人間の生活圏に隣接しており,排水による水質汚濁,開発行為による棲息地の消失の危険にさらされているため保全が必要である。

キーワード: ドロアワモチ,絶滅危惧種,生物多様性,保全,泥干潟,御荘湾,愛媛県


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