軟体動物多様性学会 Molluscan Diversity, 1(1). November 2009

原著

久米島のサカヅキノミギセル(有肺目:キセルガイ科)

福田 宏・多々良有紀

要約  稀少種サカヅキノミギセルの生貝がタイプ産地の沖縄県久米島で再発見された。同島での本種は比較的乾燥した環境に棲息していた。久米島産の本種の生殖器を初めて図示する。殻と生殖器の形態は個体変異が見られるものの,従来知られていた渡嘉敷島産との間に大差はない。渡嘉敷島産で報告されていた陰茎附属肢は久米島産においても明瞭であったが,老成しても同属の別種ミカヅキノミギセルの陰茎附属肢ほど長くならない。

キーワード: ミカヅキノミギセル属,陸産貝類,稀少種,陰茎附属肢,棲息環境,琉球列島

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宮城県から発見されたクビキレガイモドキ(新生腹足上目:イツマデガイ科)

鈴木孝男・山下博由・宮城豊彦・多々良有紀

要約  宮城県の本吉郡南三陸町,石巻市万石浦,塩竃市浦戸野々島及び浦戸桂島において,絶滅危惧種クビキレガイモドキの生息が確認された。これらは,本種の宮城県からの初記録である。それらのうち浦戸諸島は,本種の日本太平洋岸における分布南限である。本種の生息環境は,潮上帯のアマモや海藻類の打ち上げ堆積物帯であり,そのような環境は,埋め立て・護岸などによって破壊されることが多く,保全対策が必要である。

キーワード: 絶滅危惧種,分布,生息環境,潮上帯,保全,東北地方

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東京湾小櫃川河口産オウギウロコガイ(二枚貝綱:マルスダレガイ目:ウロコガイ科)

多々良有紀・福田 宏

要約 風呂田利夫教授のコレクション中に,稀少種オウギウロコガイの標本が見出された。千葉県木更津市小櫃川河口盤州干潟沖の潮下帯から,1982 年に採集された標本である。これは本種が東京湾及び潮下帯から産出した現時点で唯一の確実な記録である。本種の学名Galeommella utinomii Habe, 1958 の有効性,特にGaleomnia [sic; = Galeomma] japonica A. Adams, 1862 との関係や,近縁属との類縁も併せて論じる。

キーワード: ウロコガイ上科,ニッポンマメアゲマキ,稀少種,内湾,潮下帯,千葉県,盤州干潟

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