軟体動物多様性学会 Molluscan Diversity, 1(2). March 2010

原著

東京湾岸人工水路で確認されたサザナミツボ(新生腹足上目:サザナミツボ科)

柚原 剛・多々良有紀・多留聖典

要約  東京湾奥部の人工水路である蔵波川および前川河口部汽水域でサザナミツボの生貝が発見された。東京湾内で本種の詳細な生息環境が報告されるのはこれが初めてである。同産地は保全対象とされない場合が多い人工水路であったが,本種の他にも近年の東京湾では希少となった種が出現したため,保全サイトとしての維持管理が望まれる。

キーワード: リソツボ上科,保全,希少種,生息環境,埋立地,干潟,潮間帯,汽水,河口,千葉県

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岡山県児島湖の現生淡水産貝類相

福田 宏・石川 旬・村上 亘

要約 児島湖で現生淡水産貝類相を調査した結果,腹足綱16種・二枚貝綱8種の棲息が確認された。優占種はヒメタニシ,スクミリンゴガイ,サカマキガイで,いずれも富栄養化した止水を好む種である。移入種は9種に上り,種名・原産地が未詳の種(モノアラガイ属,シジミ属)も含まれる。児島湖完成前に文献記録があるマルタニシ,カワニナ,ミズゴマツボなどは確認されず,水質悪化に伴って絶滅した可能性がある。一方,全国的に見ても産地の少ない稀少種マメタニシとカラスガイが現在も多産する。僅かながら流水環境にある笹ヶ瀬川の河口周辺は種の多様性が最も大きく,イシガイ科の二枚貝類も比較的多かった。岡山県新記録となるレンズヒラマキ,スジイリカワコザラも見出されたが,前種は国内移入個体群かもしれない。

キーワード: 人工湖,水質汚濁,富栄養化,絶滅危惧種,移入種,岡山市,玉野市

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