河川改修工事の改善を提言
〜カメ類個体群に与える影響から

2007年2月23日

「二重川における河川改修工事がカメ類にとって良好な生息環境を維持できていない」という調査結果を東邦大学地理生態学研究室(教授:長谷川雅美)・NPO法人しろい環境塾・NPO法人カメネットワークジャパンが共同で示し、2月24日に行われるしろい環境塾主催の「カメ救出大作戦」発表会で東邦大学大学院生 臼田隼人が発表します。二重川は千葉県北西部に流れる川。ここでは、河川法97年法改正をうけ、治水と自然環境の維持を目的とした河川改修が行われました。しかし、実際にこの河川改修が二重川流域の生物に与えた影響は評価されてきませんでした。そこで、淡水性のカメ類3種(在来種:クサガメ、ニホンイシガメ 外来種:ミシシッピアカミミガメ)に与えた影響を調査したところ、個体数(個体群密度)について、在来種の個体数は改修後が改修前よりも減少していました。また、外来種であるミシシッピアカミミガメにおいては、河川改修中は減少したものの、その後増加していました。生存率において、初冬から初春にかけて河川改修が行われた地域では、越冬していたカメ類の生存率が、自然状態が保たれていた異なる河川の50%以下という低水準であることが推定されました。河川改修がカメ類の個体数を減少させ、一度減った個体数は容易に回復しないこと、そして現在、生態系の撹乱を招く生物として問題となっているミシシッピアカミミガメが河川改修によってより勢力を拡大することが示唆されました。また、カメ類は本来川岸の横穴や植物の根元など、流れのない所を越冬場所としますが、河川改修によりその場所が失われていることが示唆されました。以上のことから、二重川における河川改修は、カメ類にとって良好な生息環境を維持していないことが明らかとなりました。今回の発表では、施工時期の検討も含め、河川に生息する生物の生活を考慮に入れ、河川改修工事を行う重要性を提言します。今後、同様の調査をカメ類以外の生物に対して、また二重川以外の河川でも行い、改善策などを、行政を含めた関係団体に調査結果を踏まえ提言していく予定です。

97年改正河川法では、河川管理の目的として従来の治水・利水の他に河川生態系や植生の保護・育成が加わりました。しかし、それぞれの河川によって状況が異なるため、工事の方法等に対しての詳細な規定はありません。したがって、河川改修工事を終えた後に、その河川に生息・生育する生物に対して与えた影響を調査し、評価する必要があります。

●しろい環境塾 「カメ救出大作戦」発表会
【日時】平成19年2月24日(土) 13:00〜
【場所】 千葉県白井市保健福祉センター「ウェルぷらっと」 (白井市役所となり)

【お問い合わせ先】
東邦大学理学部 東京湾生態系研究センター
電話:(047)472-1159