複合物性研究センターフォーラム2007開催される

生体内の遺伝子を光でリモートコントロールする新手法など発表

2007年3月21日

 

 本学複合物性研究センターでは、去る3月14日に年次研究報告として「複合物性研究センターフォーラム2007」を開催致しました。フォーラムでは、「物性研究のフロンティア〜次世代の機能性物質の創成をめざして〜」をテーマに、理学部物理学科、化学科、生物分子科学科の教員を中心とするセンターのメンバーによる12の発表、先進フォトポリマー研究部門の市村國宏特任教授による特別講演、および大学生・大学院生による32本のポスターセッションが行われ、活発な意見交換がなされました。

 フォーラム中では、生物分子科学科の古田寿昭教授による、生体内で働く遺伝子を紫外光の照射によって非侵襲的に制御する手法に関する発表がありました。古田教授はこれまで、「光分解性保護基」と呼ばれる原子団を使って、生理活性分子の活性状態を光で制御する研究に取り組んできました。生理活性分子に光分解性保護基を結合させるとその分子は不活性になり、この状態の分子(ケージド化合物という)に紫外光を照射すると、分子から光分解性保護基が分離し、分子は再び活性化します。この現象を利用することで、生体細胞内に予めケージド化合物にした生理活性分子を導入し、外部から紫外線を局所的に照射することで、細胞の特定部位にのみ、元の生理活性分子を出現させることが可能になります。このようなケージド化合物を利用した手法は、細胞内の情報伝達メカニズム解明や遺伝子の機能解析などに役立つ強力なツールとして、近年、世界的な注目を集めています。

 このたび、古田教授のチームでは、PNA(ペプチド核酸)のケージド化合物合成に世界で初めて成功し、PNAの不活性化、および紫外光照射による再活性化を確認しました。PNAは特定の遺伝子を発現させたり、あるいは発現を阻害したりすることができるDNAに似た人工分子です。今回、PNAケージド化合物の合成法が確立されたことで、生体内の特定部位で特定の遺伝子を自由にスイッチングする技術への道が拓かれました。従来の技術ではこのような制御は不可能であり、分子生物学や医学基礎研究の分野に大きなインパクトを与えるものと期待されます。

(文/黒田達明・東邦大学契約ライター)

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東邦大学理学部生物分子科学科 古田寿昭
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