クボミテッポウエビ 東京湾で初めて確認

2007年7月12日

 泥干潟に生息するエビの仲間であるクボミテッポウエビ(Stenalpheops anacanthus Miya, 1997)が、東京湾沿岸の多摩川河口干潟において確認されたことが、駒井智幸氏(千葉県立中央博物館上席研究員・東邦大学理学部東京湾生態系研究センター訪問研究員)によって示されました。今回確認された個体は、2007 年5 月19 日に行われた「多摩川河口干潟生物調査・観察会」において捕獲され、東邦大学東京湾生態系研究センターにて標本とされたものです。
 クボミテッポウエビはアナジャコやスナモグリの巣穴に生息していることが知られています。これまでに採集された記録があるのは、瀬戸内海(広島県宮島、山口県平生町、愛媛県東予港)、日本海南部(山口県萩沖)および黄海沿岸です。駒井氏個人としては和歌山県、奄美大島、西表島で採集していますが、これらの地域より北東部に位置する東京湾において確認されることはありませんでした。東京湾における本種の出現は、潮干狩り用のアサリなどにまぎれて持ち込まれた可能性(移入種)、または温暖化によって生息域を拡げた可能性が考えられます。本種が東京湾の生態系(他種)にどのような影響を与えるかについては、わかっていませんが、今後、継続的に注目しておく必要があります。

 東邦大学理学部東京湾生態系研究センターでは、今年度から開始された干潟モニタリングプロジェクトなどにより、東京湾をはじめとする周辺干潟での本種の動向を継続的に観察していきます。

(文/森上需:東邦大学東京湾生態系研究センター)


《干潟モニタリングプロジェクト》東邦大学理学部東京湾生態系研究センターが今年度から開始したプロジェクト。干潟生物の多様性をいろいろな場所で、多くの人が同じ方法で調査し、情報を共有することで、より多くの情報を得ることを目的としています。各地での自然観察会において実際に市民参加型の生物調査を行ってきた経験から、多くの人がより手軽に、そして確実に行えるように開発した統一手法による調査を継続的に東京湾周辺で行う。

※ 取材をされる方は【問い合わせ先】までご一報くださいますよう宜しくお願い申し上げます。

【お問い合わせ先】
東邦大学理学部 東京湾生態系研究センター
森上 需
TEL・FAX:(047)472-1159