カイヤドリウミグモはアサリなどの二枚貝に寄生することが知られています。しかし、日本国内での出現記録は非常に少なく、本種の生態に関する知見はほとんどありません。今年4月に千葉県の小櫃川河口に位置する盤洲干潟において、アサリおよびマテガイから本種の寄生が伝えられ、その後、両種とも大量斃死が確認されました。そのため、現地の2漁業組合は6月後半よりアサリの出荷を停止しました。(現地の2漁業組合のウェブサイトによると、現在、養貝場内で生産できる貝については従来通り鮮度が保てることが確認できたため、養貝場での生産を行い、出荷を再開しています。)
そこで、当センターでは本種の貝類への寄生状況を把握し、本種の生態的特性を検討するため、7月14日に調査を行いました。本調査では、アサリ、マテガイおよびシオフキが寄生を受けていることが確認されました。マテガイおよびシオフキについては過去に寄生の記録はなく、両種ともに今回の発生で新たに記録された寄主と考えられます。特にアサリ(434個体)の寄生率は55.5%で、特に殻長25mm
以上の大型個体においては90.3%と、ほとんどの個体が寄生を受けていました。また、1個体の貝への寄生数は1〜60個体ほどであり、過去の報告の1〜10個体を大きく上回っていました。
本種は二枚貝の体液を主食としているため、多数のウミグモの寄生による寄主へのストレスは相当高いと推測されます。また、アサリにおいて、本種は水管直前から唇弁、鰓(えら)に至る外套腔に寄生していることから、体内での水流を阻害し、呼吸効率および採餌効率の低下を引き起こす可能性があります。これらのことから、寄主が多数のウミグモの寄生を受けることで衰弱し、斃死に至る危険性は高く、本種はいわゆる侵略的寄生者である可能性が強く示唆されました。本種はどのように大量出現したのか、詳細は分かっていませんが、福島県での出現記録があること、低温下で飼育しても長く生残していることから、温暖化による分布域の拡大は考えにくいことが示唆されました。当センターでは、今回のカイヤドリウミグモの出現による被害の拡大防止および回復にむけて、本種の動向を継続的に調査・検討していきます。
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