軟体動物多様性学会 Molluscan
Diversity, 3(2). December 2012
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原著
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石川県七尾西湾沿岸から発見されたクビキレガイモドキ(腹足綱:リソツボ上科:イツマデガイ科)
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亀田勇一・芳賀拓真・湊 宏
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要約
クビキレガイモドキの分布の南限域である石川県の七尾湾において,能登島および七尾西湾の計4地点から本種が採集された。これまでの記録では七尾南湾南西部からのみ生息が確認されており,本報告は能登島と七尾西湾における初記録である。生息環境はいずれも護岸など人工的な海岸上に堆積した海草などの漂着物下で,2年連続で採集されたことから一時的な定着ではないと考えられる。したがって本種の保全においては,これまで重視されていなかった人工的な環境のハビタットとしての重要性やその扱いについても再考する必要がある。
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キーワード:
絶滅危惧種,陸産貝類,能登半島
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琵琶湖集水域におけるシジミ属の分布状況
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内野 透・岸野 底
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要約
琵琶湖集水域における外来種タイワンシジミの侵入状況を知る目的で,2009年に琵琶湖湖岸も含む計200地点においてシジミ属(マシジミ,タイワンシジミ,セタシジミ)の採集を行った。その結果,137地点でシジミ属を確認し,そのうち,タイワンシジミは120地点と出現頻度が著しく高かった。在来種であるマシジミは30地点からの出現に留まり,そのうち,タイワンシジミと混生している地点数は13であった。1990年代初めの琵琶湖周辺水域におけるシジミ属はマシジミのみとされるため,本調査の結果は琵琶湖集水域におけるタイワンシジミの急速な分布拡大に伴うマシジミの絶滅の危険性を示した。
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キーワード: シジミ科,河川,水路,移入種,保全,琵琶湖,滋賀県
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北海道中頓別町で採集されたクリイロキセルガイモドキ(有肺類:キセルガイモドキ科)
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森井悠太
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要約
北海道中頓別町の中頓別鍾乳洞付近において,7個体のクリイロキセルガイモドキの死殻を採集した。採集した死殻はどれも殻皮の残る比較的新しいものであったことから,採集地点において現在もクリイロキセルガイモドキが生息していると推測される。この新産地はこれまでに知られていたクリイロキセルガイモドキの最北の産地よりもおよそ
100 km
北方に位置し,北限記録を更新するものである。さらに日本のキセルガイモドキ科貝類の北限記録でもあり,生物地理学的に重要な知見であると考えられる。
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キーワード: キセルガイモドキ科,分布,生物地理,宗谷総合振興局(旧・宗谷支庁)
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高知県猿田洞より産出したアツブタムシオイガイ属化石種サルダアツブタムシオイガイ(新称)を含む化石陸産貝類相
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川瀬基弘・早瀬善正・安藤佑介・西岡佑一郎
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要約 高知県猿田洞の裂罅(れっか)堆積物(fissure
deposits)より26種の陸産貝類化石を発見した。これまでに猿田洞の化石陸産貝類相の報告はない。猿田洞の化石陸産貝類群は四国の現生陸産貝類の種構成とほぼ同様で,優占種は石灰岩地および石灰洞窟棲種であった。新種の可能性が高いAwalycaeus
sp.サルダアツブタムシオイガイ(和名新称)は四国(南部)の後期更新世と推定される年代の絶滅種であろうと考えられる。
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キーワード: アツブタムシオイガイ属,裂罅堆積物
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和歌山県で発見された稀少種スダレハマグリ(二枚貝綱:マルスダレガイ科)
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久保田 信・小山安生
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要約 稀少種スダレハマグリの成貝の死殻3個体が,和歌山県西牟婁郡田辺市に所在する内之浦の干潟で発見されたので記録する。また,地理的分布の北限に当たる和歌山県での本種の2000年の初記録より2012年までの記録をまとめた。
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キーワード: 温暖化,泥干潟,内之浦,田辺市,紀伊半島
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和歌山県白浜町沿岸で採取された稀少種のホラガイ(腹足綱:フジツガイ科)
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久保田 信
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要約 和歌山県沿岸における稀少種ホラガイ成貝の死殻1個体が和歌山県白浜町瀬戸漁港で2011年に発見されたので記録する。稀少種のこのホラガイの貝殻(殻長
29.5
cm)には,大型だが貝殻サイズには少し見合わないイシダタミヤドカリの雄(前甲長
22.0 mm)が入っていた。
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キーワード: 稀少種,分布,ヤドカリ,紀伊半島
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和歌山県白浜町産ヤクシマダカラ(腹足綱:タカラガイ科)の最大と最小の成貝
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久保田 信
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要約 1998年から2012年までの14年間にわたり和歌山県西牟婁郡白浜町番所崎と京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所“北浜”の打ち上げ物から採取した最大と最小のヤクシマダカラ(殻長
29-70
mm)を記録する。また,和歌山県白浜町瀬戸漁港で最近発見した白浜町最大の貝殻(殻長
75
mm)も記録する。この内の最小個体は日本産の本種の最小記録となった。
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キーワード: タカラガイ,個体変異,日本最小,サイズ,紀伊半島,ヤドカリ
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