東京港生物調査

2012年11月のお台場海浜公園

2012.11.25


(写真:多留聖典)

 2012年11月のお台場は、海底の硝酸還元菌のマットもほぼ消失し、それに覆われていた大量のホンビノスをはじめとする二枚貝の死殻が姿を現した。そしてその骸を礎として、ユウレイボヤ類が大きく育っていた。その脇を今年もトゲアメフラシが通りすぎてゆく。

 沈みつつある人工漁礁では、一度はほとんどの生物が貧酸素水塊の発生とともに脱落してしまっていたが、再びユウレイボヤやマンハッタンボヤなどが付着し始めていた。そしてその隙間には、多毛類の棲管が多く見られ、ときおり鰓冠を開いていた。


(写真:多留聖典)


(写真:多留聖典)

 人工漁礁上に多産していた鰓冠を開く多毛類は、アズサケヤリの一種であった。無事に貧酸素を乗り切ったようで、魚礁自体や、その支柱の表面のホヤの間隙から花のような鰓を開いていた。

 魚礁の下には、すでに先月は多産していたシマイサキの姿はなく、その代わりにメバルの一種(おそらくシロメバル)の姿が見られた。この個体は全長20cmほど。ホヤ類の表面に付着するワレカラ類などを食べているのだろうか。


(写真:多留聖典)


(写真:多留聖典)

 岸近くにはシオグサ類が漂着しており、その中には数10個体のアリモウミウシが見られた。10月から12月にかけては、多くの生き物がお台場に姿を見せる。次回もまた意外な生物が姿を見せそうである。

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