干潟ウォッチングフィールドガイド連動企画
干潟生物モニタリングプロジェクト

 干潟の生物相はいつも同じというわけではない。ある種がいつの間にかいなくなったり突然現れたり、さらには外来種が侵入したりすることもある。生物の出現を継続的に観察して得られた記録は、干潟の環境変化を知るうえで欠くことのできない情報である。
 ところが、そのような調査には、時間的、金銭的、そして体力的な面などで、自ずから限界がある。そこで、調査干潟生物の多様性をいろいろな場所で、多くの人が同じ方法で調査し、情報を共有することで、より多くの情報を得ることができる。
 個人別やグループ別に調査するとお互いの比較もできるし、発見できる種数が増える。季節や潮汐が違えばまた、発見できる生物も異なってくる。そのためには、統一された手法による調査が望ましい。これから説明する方法は、東京湾生態系研究センターが各地での自然観察会において実際に行ってきた経験から、より手軽に、そして確実に行えるように開発したものである。

調査方法概要

 干潟内に調査区域を設定し、一つの調査区域につき30分間で、できるだけ多くの種類の生物を確認する。干潟では、生物は砂や泥の中、また漂着物や転石の陰に隠れていることが多く、環境が違うと生物の種類も違っている。調査対象の干潟内でいろいろな場所、そしていろいろな方法で隠れている生物を発見し、出現環境とともに記録する。

1. 調査区域を決定する

 調査対象とする干潟が決定したら、調査区域の中心を決める。GPS装置を使用している場合は、緯度・経度を測定・記録しておく。決定した中心からだいたい50mくらいの範囲、つまり直径約100mを一つの調査区域とする。
 干潟が広い場合には、塩生湿地(後背湿地)、泥質干潟、砂質干潟、潮位の高い干潟、潮位の低い干潟など、複数の調査区域を設定する。調査区域ごとに写真を撮っておくと、環境の記述に役立つ。また、地点を決めて調査を継続すると、生物相の変化が記録できる。

2. できるだけ多くの種類を発見する

 1つの調査区域内で、30分の間にできるだけ多くの種類を発見する。使う用具はピンセット、手持ちスコップ、ふるい(※目合い 2mm 程度)、手網、バケツなど。カキがいたりカニを捕まえるときは軍手をするなど、安全に配慮する。

 採集・観察が終わったら、区域ごと、調査者もしくはグループごとに確認、採集した生物の名前を調べ、その場で記録用紙に記入する。その場では同定できない生物が見つかった場合は、種ごとに「〜の1種 (1)」などと大まかな分類群に分けておき、写真を撮ったり、標本を作製してあとで種が同定できるようにしておく。


※2mmよりも細かいふるいを併用しても良いが、他の人の記録との比較が困難になるため、目合い2mm程度のふるいでふるい分け、残ったものとより小さなものとを分けて記録すること。

 

3. 記録シートを清書する

 調査終了後に、干潟の現地で記入した記録用紙を元に、記録シートを清書する。この時点で補っておく必要がある情報を以下に示す。

  • 調査地点の緯度・経度(GPS装置や電子地図ソフト、インターネット上の地図サイトなどを利用)
  • 不明種の同定(種まで確定できない場合は、属・科など上位分類群まで同定する)
  • 報告者・同定者(特に同定者は精度を担保し、確認をとる上で重要な情報となる)

記録シートが完成したら、その結果をまとめ、東京湾生態系研究センターにFax(047-472-1159)で送信していただけると、情報の蓄積が可能となる。皆様のご協力をお願いする次第である。

調査記録用紙(東京湾版)のダウンロード
(PDFファイル, 35kB)