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熊本探訪(2)
(2008年度プランクトン・ベントス学会in熊本)

2008.9.7

 


(写真:多留聖典)

 さて、学会本体の話は要旨集やあとで発表される論文を読めばいいことなので、学会期間中に少しだけ空いた時間があったので、近くをぶらぶらと回ってみたことについて書いてみたい。
 まず、熊本から少し南下して、川尻から海路口(うじぐち)に向かった。このあたりは九州新幹線の工事が行われており、猛暑の中、隣の道に行くにもなぜかえらい遠回りをする羽目になった(付近には歩いている人などほとんどいないのだが)。周囲には干拓で作られたと思われる水田が広がっており、水路の際や水田の畦にはピンク色の塊が点々とあった。


 このピンク色の塊は、「ジャンボタニシ」として有名なスクミリンゴガイの卵塊である。スクミリンゴガイは、1980年代初頭に食用として持ち込まれ、南日本各地で養殖されたが需要がなく、管理放棄された養殖場から野外に散逸し、今や世界および日本の外来種ワースト100に入る、要注意外来生物の称号を戴いている。南米原産であり寒さに弱いが、温暖な九州では安定して生息しているようで、非常に多くの個体が水田の中や水路の壁面を這っていた。


(写真:多留聖典)



(写真:多留聖典)

 海路口町学科の海は、すっぱりと直線的な護岸に囲われていた。階段を上って堤防の上にのぼると、テトラポッドの先に捨石が敷き詰められていた。たまたま満潮であったため、豊かな干潟を見ることはできず、ただ人工的な海岸線のみが目に付いた。
 誇らしげな竣工記念碑の脇には、「ゴミ等の投機をすることは禁じられており・・・」という看板が掲げられていた。頭の悪いワタクシは、ゴミとは何であるか、たいへん深い悩みにとらわれてしまった。遠くで重機が動き、未だ何らかの工事が進捗しているようであった。


 見た目通り人を拒否するかのような海は、テトラポッドと捨石でひどく歩きにくかったが、捨石や漂着物には数多くのトビハゼがよじ登り、タマキビやマルウズラタマキビがびっしりと身を寄せ、水中にはイシダタミが這っていた。赤錆びた廃船にはシロスジフジツボが育っていた。
 テトラポッドの下には、本来この捨石の先に広がる干潟に生息しているのであろう、たくさんのアカニシやサルボウ、タイラギの殻が落ちていた。残念なことに潮が悪く、これらの貝の生きた個体を観察することはできなかった。


(写真:多留聖典)

※ (c) 東邦大学理学部東京湾生態系研究センター 出典を明記しない引用を禁じます。
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