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熊本探訪(3)
(2008年度プランクトン・ベントス学会in熊本)

2008.9.8

 


(写真:多留聖典)

 学会が終わった翌日、一日だけ余裕があったので、バスに乗って熊本市の中心部から少し北の、鰐洞(わんどう)に向かった。バスを降りると、9月とは言えまだ強力な日差しが照りつけていた。ちなみに、バス停から海岸へは、ショートカットして降り(落ち?)られるが、普通の人は素直に階段を用いた方がよい。
 塩屋からこのあたりにかけては、有明海名物の泥干潟域である。ただ、もちろん満潮なので(学会の日程は、参加者の調査時期とぶつからないように配慮されているらしい)、泥干潟は見えないが、それでも潮間帯上部〜潮上帯にかけての生物を観察してみた。


 潮間帯の下部は泥干潟のようだが、満潮のため見えない。中部は転石帯であり、上部は岩礁と、非常に多様な環境がぎゅっと濃縮されている。河口デルタに形成された後背湿地と前浜を併せ持つ東京湾の干潟と、大量の火山性の潟泥が広範囲に堆積した有明海では、ともに河川による堆積作用であっても干潟の形成過程が大きく異なるためだろう。まずはバス停直下の汀線際を見ると、比較的砂の多い底質に転石がいくつか転がっていた。アマガイやウネナシトマヤガイなどがカキ類の付着した転石の間に生息し、ユビナガホンヤドカリが大きな殻を引きずって歩いていた。


(写真:多留聖典)



(写真:多留聖典)

 海岸に沿って北側へと歩いてゆくと、大きな転石が積み重なっていた。アラレタマキビ、タマキビ、シロスジフジツボなどが多く、カニムシの1種 なども見られた。少し潮位の低い岩盤には、アマガイやマルウズラタマキビなどが多数這っていた。タイドプール内の転石を裏返すと、やはりアマガイが多く生息していた。その下の礫中からは、関東の磯でもおなじみのヒライソガニ、ホンヤドカリなどがもぞもぞと動き出した。さらにいくつか転石をめくると、転石下の礫中からヒメアカイソガニ、クチバガイが現れ、石の裏にはウスコミミが貼りついていたりと、関東の干潟ではなかなか見られない生物を観察できた。

※ (c) 東邦大学理学部東京湾生態系研究センター 出典を明記しない引用を禁じます。
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