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三番瀬海浜公園のアオサ

2005.10.15


(写真:多留聖典)

 船橋市と市川市にまたがる三番瀬海浜公園は、潮干狩りシーズンが終わる頃になると大量のアオサ類やシオグサ類などの海藻が目に付く。打ち上げられたこれらの海藻が砂浜を覆ってしまうため、その下の海底が貧酸素化を起こしていることが容易に想像される。また、海藻自体も直射光に熱せられて腐敗し、両者相まって硫化物臭を発生するため、悪臭の原因にもなる。同様の現象は隣接する谷津干潟などではより顕著であり、辺り一面緑色になってしまう。どこぞの不動産業者が、近隣のマンションを売り出すときに、「緑に囲まれた谷津干潟」と標榜していたのはこのことなんだろうか。


 この海藻の上に、赤っぽいものが点々と目に入った。近づいてみると、それはカワゴカイ属 (Hediste)のゴカイであることが判明。いわゆるもっとも一般に言うところの「ゴカイ」であった。じっくり見ると、海藻の表面だけではなく、わずかに覗く砂地や折り重なるアオサの中から、それこそ無数のゴカイが現れた。
 これらのゴカイ、おそらくは海底の貧酸素化に耐えきれず、酸素を求めて這い出したものと推定される。このように表面に露出した状態では、すぐに鳥の餌となってしまう上に、直射光により温度上昇で死んでしまったり、さらには清掃の時にアオサと一緒に廃棄されてしまう可能性もある。もちろん清掃が悪いわけではないので誤解なきよう。


(写真:多留聖典)

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