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東京湾の希少種(2)

2013.2.20


(写真:多留聖典)

 2012年7月に「干潟の絶滅危惧動物図鑑 海岸ベントスのレッドデータブック」(日本ベントス学会編)が出版された。筆者も編集委員に加わったが、編集中〜出版後に東京湾での報告がほぼない、もしくは絶滅とされた種が見つかった。棲息が確認されたことは喜ばしいが、もちろん危機的であることには変わりがない。小櫃川河口の希少種に引き続き、東京港周辺の希少種を掲載する。

 "ロバトランペア"の一種(ロバトランペア科)。一科一属一種で、和名はまだない。お台場海浜公園で2012年12月と、2013年1月の2回にわたり確認された。有櫛動物はその多くがプランクトンのため、上記書籍には掲載されていないが、本種は普段、海底に定位しておりベントス的な生態を持つ。今まで石垣島・沖縄島・鹿児島湾・瀬戸内海、そしてタイプ産地の鳥羽での報告があるが、東京湾は今のところ北限。


(写真:多留聖典)


(写真:多留聖典)

 ヌカルミクチキレ(トウガタガイ科:準絶滅危惧)。近年になり発見された未記載種で、既知の産地は少なく、攪乱された内湾での棲息は困難であると考えられており、東京湾では過去に出現報告はなされていない。この個体は、上記のロバトランペアと同様に、2013年1月にお台場海浜公園で発見されたもの。偶発的な出現なのか、継続的に棲息しているのか見極めが必要である。

 オウギウロコガイ(ウロコガイ科:絶滅危惧IB類)。東京湾では1982年に小櫃川河口で採集された標本が最後の記録で、絶滅状態とされている。しかし京浜運河で発見したというウェブ上の情報もあり、本個体はその近傍で採集された。本種は日本近海産貝類図鑑の図が誤記であるため情報に乏しく、同定に何人もの貝類専門家のご助力を頂いたのだが、諸事情により産地情報の公表を控えさせていただく。蛇足だが、環境アセスメントで事業主が低レベルで悪質だと、希少種や過去データと全く異なる出現種の報告を理解・説明する能力が不足しているためか、不当な業務の打ち切りなどの直接的損害のみでなく、研究者との信頼関係を破壊し、貴重な出現記録を闇に葬り去るなど社会的な打撃も大きい。データを機密扱いするような行為は百害あって一利無しであり、猛省を促す。


(写真:多留聖典)


(写真:多留聖典)

 テナガツノヤドカリ(ヤドカリ科:準絶滅危惧)。東京湾では小櫃川河口干潟などで棲息しているが、それ以外の地点での報告例は非常に少ない。上記のオウギウロコガイと同時に同地点で1個体が確認されたのだが、断腸の思いで産地などの情報の掲載を抑止させていただく。こちらも蛇足だが、「させていただく」は使役+謙譲であり、本来はほぼあり得ない表現であるが、本人には意志決定権がなく、従属的な決定であることを示している。実に情けないが、敢えて今回はこの表現を用いたこと、ご了解いただきたい。

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