市民参加型干潟生物調査

 市民が自ら、地域の干潟に生息する生物を簡便に調査する方法が確立されれば、環境教育への応用や、長期的・継続的なモニタリング、また保全活動に対する科学的データの提示などに非常に有用なものとなる。また統一された方法で多くの干潟の特性の生物相比較などを行うことによって、その干潟の重要性をより理解しやすくなる。そのためには、より多くの干潟の生物をより多くの人が調査することが不可欠である。
 以下の方法は、日本国際湿地保全連合および鈴木孝男氏(東北大学)らにより、経団連自然保護基金の助成を受けて提案されたものである。ガイドブックも作成されており、本ページの内容はその手法に掲載されている。

調査方法概要

用意する調査用具(各人の衣類などは除く)

  • ポリ袋(1地点につき1人2枚)
  • 油性マジック
  • 小型スコップ(移植ごて)または大型ショベル
  • 野帳・筆記用具
  • 目合い2mm程度のふるい
  • 白バット
1. 調査エリアの決定

対象となる干潟を代表するような景観・特徴的な環境など、複数(2〜3箇所)の調査エリアを設定する。

  • 調査エリアの潮間帯の幅が100m超の場合はエリア内に2〜3調査地点を設け、狭い場合は1調査地点として歩き回ってカバーする。
  • 植生帯について、狭い場合は1調査地点に含め、広い場合は独立した調査地点とする。
  • 人工構造物や海草の育成がある場合は、それらへの依存種も含めて記録する。

2. 調査の実践

調査は干潟表面および掘り返しの2パターンを行う。1グループ8名で行い、うち1名もしくは他の1名が調査リーダーとして進行管理を行う。1調査地点につき、1人あたり約50m四方の範囲で探索する。

  • 表在ベントスを15分間探索する。このとき転石・漂着物の下や間隙も含める。
  • 埋在ベントスは1回につき直径約15cm、深さ約20cmの掘り起こしを1回として15回、干潟底土を掘り起こしてベントスを採集する。
  • それぞれを別のポリ袋に入れて保管する。固着生物や同定の確かな生物は捕獲せず、記録だけでもよい。
  • 生活痕跡(棲管・巣穴・糞塊・殻など)を記録する(右図)。ただし貝殻は波浪などによる移送の可能性もあるため除外する。

 

3. 同定および記録

調査が終了したら、各人がポリ袋の中のベントスを取り出し、ふるいなどで洗浄した後バットに取り出して同定する。

  • 記録された生物はそれぞれが表在・埋在を分けて記録シートに記入する。生活痕跡も別に記録する。
  • 同定に標本が必要なものがあるので、各種数個体を標本として保存する。80%程度のエタノールで固定し、固定液ごとポリ瓶などに収容し、採集地点および採集年月日・採集者名を記録したラベルを瓶表面に貼付する。同時に耐水紙に同内容を記入して瓶に封入すると良い。

東京湾で2009年に施行した結果はこちらから