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鹿児島探訪(2)
(第20回魚類生態研究会)

2009.2.17

 


(写真:多留聖典)

 翌日は薩摩半島を南下しメヒルギの北限(実際には熊本県の八代海沿岸や静岡県の青野川にも人為移入されており、また喜入のメヒルギも人為移入の疑いがある)とされる喜入へと向かった。その「北限の地」とされる場所よりもさらに北に、埋め立て地の間に取り残されたメヒルギ群落がある。周囲には工場や石油会社の備蓄タンクが建ち並び、その中に突然開ける景観はまさに別世界である。河岸の転石の間や植生の根元には、ツブカワザンショウ、クリイロカワザンショウ、ウミニナ、ホソウミニナ、フトヘナタリなどが見られた。


 メヒルギの根本を縫うように流れる浅いクリークにはメヒルギの実生があちこちに見られた。クリーク内にはヘナタリ、カワアイ、イボウミニナなどの巻貝、モズミヨコエビ、シマドロソコエビなどのヨコエビやヨコヤアナジャコ、アベハゼなどが多数見られた。


(写真:多留聖典)



(写真:多留聖典)

 メヒルギの幹にはマガキやシロスジフジツボが多数付着し、ときおりフトヘナタリが幹によじ登っていた。砂質の強い砂泥底の中から多数のヒメカノコ、カノコガイ、ハザクラ、ソトオリガイ、そして多毛類のコケゴカイが現れ、生物相が豊かであることが感じられた。


 しかし、残念ながら古タイヤやペットボトルなどの投棄物が目立ち、また下水道が完備されていないのか白濁した排水がそのまま干潟へと流れ込んでいた。偶然のように埋め立て地の間に残された干潟であるが、その存在はもはや、そこの生物にとっては必然となっていることは、言うまでもない。
 その日は「道の駅 喜入」の温泉に浸かり、さらに南下して指宿にほど近い山川に宿を取った。


(写真:多留聖典)

※ (c) 東邦大学理学部東京湾生態系研究センター 出典を明記しない引用を禁じます。
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